2010-08-16

女妖譚

偶然の再会だった。私にとっては。

旧い友人の彼は、ひょっこりと目の前に現れたのだ。
子供時代に不思議な日々を共にした奇妙な少年。
目の前の青年を一目見たときに「あ」と声が出てしまった。

「久し振りだね。」と彼は、つい一月ほど前にも会ったように話しかけた。
彼は事情を私に告げて、私の車で自分をある場所へ連れて行ってほしいと言うのだ。相変わらず突飛すぎる話で理解を越える、なのに全く逆らえる気がしない。言われるがままに巻き込まれていくのも昔と同じだ。あの頃は私の家族も引き込まれるように彼に従っていた。

これは、魔性に魅入られると言うことなのだろうか?

彼には後部座席に乗ってもらった。
助手席で小皺を間近に見られるなんて避けたかったし、なにより、慌てふためいたり、年甲斐も無くはしゃいだり、照れ臭かったり。要は動揺していた。

彼は、意外とちゃんと年を取っていた。それでも私の息子か甥にしか見えないだろう。
煙草で潰れた喉から紡がれる声はザラザラしてるけど、はにかんだような不思議な甘さを含んでいるので、この男は少年時代のままにロマンチストなのだと思う。
その癖、奇妙に深く響いて良く通る。小声で話しかけられてもちゃんと聴き取れた。彼の本当の声は、きっと人間の声とは違う経路で私たちの耳に届くのだろう。地の底を出自とする妖しの声だ。
私が少女だった頃には、そんな風に思い至らず不可思議な魅力に絡め取られていた。
でも、今なら判る。

「久し振りね、鬼太郎さん。」
「今は、田中って言ってるんだ。」
「そう呼んだ方が良い?」
「いや、鬼太郎で頼むよ。夢子ちゃん?」
「嬉しいわ。でも人が居るところでは天童さんって呼んでね。」
「結婚してないの?」
「今はね。もう懲り懲りよ。」

自分の息子とも言えるような見掛の青年に名前を呼ばせるのは気を使う。あの彼女なら、今でも「鬼太郎」って呼ぶのかしら?
彼女は、美人ではなかった。可愛い、とも言いにくかった。むしろ奇妙なバランスの顔立ちだった。時代遅れといって良いような地味な支度だった。
そもそも人間の女の子じゃなかった。だから、私は安心して彼女に心を開けた。彼女と居る時には、女として張り合う必要も、優等生らしくする必要も無かった。どんな女友達よりも、素のままの天童夢子で付き合えた気がする。
思えば彼女は、誰にとってもそんな存在だった。後部座席にいる(昔とは打って変わって)冴えない風情の若い男にとっても。
いや、多分、彼にとってこそ。
今だから、よく判る。

「彼女はどうしてるの?猫娘ちゃん。」
「これから逢えるよ。」

言われるままに車を走らせて着いた場所に、少し大人になった彼女が立っていた。ちょうど後部座席の男と釣り合うくらい……いいえ、彼が合わせているのかしら?
バックミラーを覗いたら、喉の奥から笑いが漏れた。いそいそと車を降りる彼の仕草から心内が見える。昔は判らなかったけど、今の私にはよく判る。
歩み寄る彼女は、美人ではなかった。可愛い、とも言いにくかった。奇妙なバランスの顔立ちだった。時代遅れといって良いような地味な支度だった。
でもあの頃とはっきり違った。
彼女から、目が離せない!
私だけでなく、道往く人の誰もが同じだった。
不可思議な雰囲気だが、不快感は無かった。魅力というよりも、引力に近かった。

「久し振り、夢子ちゃん?」

私に向けられた笑顔も声も、親しみ深い日向の暖かさがあった。
何十年もの時を跨ぎこし、懐かしくて涙がこぼれそう。心が根こそぎ奪われるような、そんな気持ち。

……思い至った。彼女、女妖だった。
初めてゾクリとした。彼女の魅力は、物語に出てくる女幽霊の妖艶とあまりにも懸離れていたけど、人外の魔性なのだと感じた。こうして魂は奪われるのだと思った。

「あぁ……あなたも大人になったのね。」やっと笑顔を作った。

彼らに手を振り、遠ざかるバックミラーの鏡像に話しかける。
「今でも、よく判らないのよ?少女の私は、どちらに魅かれていたのかしら?」

溜息とも安堵とも取れるような深い息をひとつ吐いた。
私はすっかり大人になってしまったのだわ、と思った。

近況とか

さっぱり更新しないと思ったら妄想文ばかりアップして漫画は一年以上とか半年以上とか途中で放置しています。スミマセン><

体調不良ここに極まれりな昨今でして……漫画を描く体力と時間を作れたら描きます。本当にごめんなさい。私も悔しい。情けない!><

で、まぁ、このままでは精神衛生的にもアレなので、漫画のプロット的なアレを書き溜めてあったので体裁を整えつつチョイチョイ出してまいります。かなり破綻した文章ですが、私のゲタ猫妄想の晒し場って事で生温く見守ってやってくだされば幸いです。


他所んチで描いたゲタ+親父 親父さん出現時の内臓飛び出た感は重要ですよね?!ね?

ゲタ吉のハケ

ハケ、つまりシーンを辞する事。演劇なら舞台上から退出する事。

登場人物が人間なら「では」と物理法則に則った遠のき方を描けばいいのだが、妖怪となると一捻り必要だ。

ものすごく好きなゲゲゲ描きさんの描写でほぼ透明な焔が一瞬揺らいで消えるというシーンには本当にドギマギしまして、「うわーパクりてぇ!ものっそパクりてーーー」と、もう、いっそ「パクってイイすか?」と伺おうかと思ったのですが、ハタと「そんなカッコいいハケ方、田中ゲタ吉に似合わない。」という残念な気付きがありまして……(悔涙)

『スポーツ狂時代』最終話でのハケが印象深いのか、どうもただ闇に溶けて消えるようなイメージが強い。
そんでゲタ吉さん、厳密には下駄は履いておらず(履くとゲゲゲ営業スタイルに変化)煙草よりも酒を好む傾向にある(隙あらば呑んでおりました。高校生の癖に。)ので、ハケる際にゲタの音も煙の尾も引かない。これは絵にしにくい。地味に闇に溶けていってしまうだけだ。
それもたぶん、街中の電飾や街灯の届かぬ淀み湿った重たい闇の黒さにヌルリと同化する感じ。

全力で不健康だな!

あまりにも地味なので、クロスオーヴァー漫画の時には対峙した人間に術をかける必要性を生じさせて下駄を履いて頂きました。これで鬼太郎らしいハケになって一安心^^;







でも、ま、こんな手を何度も使うのもアレなので、いつか巧いこと『ヌルッ』っと消えるゲタ吉さんを描けたらいいなぁと夢想します。

2010-08-15

彼女が、まだ人間だった頃

歌の好きな子だったな
風に流れる解れ髪を目で追いながら
彼女の奏でる五線譜のようだと思ったんだ

2010-08-13

嵐が来る

黒い手がやってくる。
私を屠りにやってくる。
私の皮を剥ぎ、蚕の糸を奪い、亀の甲羅を削り、茫漠の調べを奏でる為に。
私の爪と牙で立ち向かおうとも、喉笛を狙う手からは逃れられない。
それが運命だから。
烏猫たる私には、全て見通せる。

三味線屋の黒い手よ。
私は怖ろしい。
お前の黒い手ではない。
今夜から、永劫に続く因果が怖ろしいのだ。

よかろう。
私の命をお前の手に渡そう。
引き換えに、お前の娘を私の環に乗せる。
猫の性を持ち、無垢な魂のままに、弄られ屠られ続けるこの因果の環に。

誰も逃れられない理の環だ。
それが私達の運命。

来い。
この嵐の夜に。
雷鳴と伴に。
新たに墓の下から生まれ出でる娘の為に。

2010-05-22

やられた!!

お久し振りの『田中ゲタ吉翼賛会(仮)』さんの更新です!
前回更新も葬式ネタをこう振ってきたか!!と度肝を抜かれる思いでしたが、今回の更新は完全降伏です。
『かの御一家』でウチがやりたいことの半分くらいはやられてしまった気がしています。しかも鬼ハイクオリティで(笑)

このドライさ。一切の感傷を突き放すかのような笑い。ゲタ吉時代の大事な特徴だと思います。
こういったことを二次創作として昇華してる辺りに、水木作品全般に対する造詣深さと愛を感じます。
素晴らしい!!

本当に毎回毎回、「あぁッ!」と膝を打つことばかりです。
次回の更新も楽しみにしています。

うをおぉぉぉぉぉ!!!!元気でたぁッ!!(←この元気が更新に反映されるといいなぁw

2010-05-17

引越し癖

かの葛飾北斎は生涯に93回も引っ越したそうです。
かく言う私も本家ブログの転居を検討してるのですが、どーもまだピンと来ません。
登録しては削除しての繰り返しです。
むにゃ~~~~!なんだかんだでシンプルが一番か??