2009-09-16

その後の怪奇・猫娘

ある夜半、猫娘は目覚める。

「お父さん……」と寝言を発して目覚める。
頬伝う涙を拭えば、自分が寝言を発したことすら忘れた。
月を見上げて、何を忘れたのか記憶の糸を手繰るが、それはぷっつり切れてて判らない。
少し、怖くなる。
耳の高さで切り揃えた髪が夜風を捕らえる。
その冷たさを払うように優しい声が彼女に届く。
「どうしたの?」
振り返れば、寝ぼけ眼の鬼太郎がこちらに身を起こしている。
どのように答えて良いのか判らず、ただ、彼女は首を左右に振る。
月明かりを背負った彼女は、鬼太郎からは影絵のように見える。
しかし猫の瞳は煌々と輝いて、彼に持ち主の心中を伝えるのだ。

そこで彼は、
ニッコリと
穏やかに
笑みをつくって
ことさらに優しく安堵を誘う
それは彼女の欲するもの。
「おやすみ、猫娘。」

彼女の瞼が閉じられ、眠りが深まった白い頬に、彼は声を出さずに告白する。

 その昔、君は、墓の下から生まれたんだ。
 雷鳴の夜に
 俺と同じに
 ひどく奇妙に捩れた誕生

 全く人間の子に生まれながら
 まごうことなき猫の性を持つ
 君は、まるで託卵の雛みたいだ

 君が年頃になり
 望まずとも人目を引くようになる頃
 君は人間に殺され、生き返り、人間を殺す。
 それを何度も繰り返している。

 止めようがない因果。
 何度やり直しても、必ずその日がやってくる。

 手を変え品を変え、俺は時間を引き延ばす。

ようこそ

ようこそ

ようこそ夜へ

0 件のコメント:

コメントを投稿