ある夜半、猫娘は目覚める。
「お父さん……」と寝言を発して目覚める。
頬伝う涙を拭えば、自分が寝言を発したことすら忘れた。
月を見上げて、何を忘れたのか記憶の糸を手繰るが、それはぷっつり切れてて判らない。
少し、怖くなる。
耳の高さで切り揃えた髪が夜風を捕らえる。
その冷たさを払うように優しい声が彼女に届く。
「どうしたの?」
振り返れば、寝ぼけ眼の鬼太郎がこちらに身を起こしている。
どのように答えて良いのか判らず、ただ、彼女は首を左右に振る。
月明かりを背負った彼女は、鬼太郎からは影絵のように見える。
しかし猫の瞳は煌々と輝いて、彼に持ち主の心中を伝えるのだ。
そこで彼は、
ニッコリと
穏やかに
笑みをつくって
ことさらに優しく安堵を誘う
それは彼女の欲するもの。
「おやすみ、猫娘。」
彼女の瞼が閉じられ、眠りが深まった白い頬に、彼は声を出さずに告白する。
その昔、君は、墓の下から生まれたんだ。
雷鳴の夜に
俺と同じに
ひどく奇妙に捩れた誕生
全く人間の子に生まれながら
まごうことなき猫の性を持つ
君は、まるで託卵の雛みたいだ
君が年頃になり
望まずとも人目を引くようになる頃
君は人間に殺され、生き返り、人間を殺す。
それを何度も繰り返している。
止めようがない因果。
何度やり直しても、必ずその日がやってくる。
手を変え品を変え、俺は時間を引き延ばす。
ようこそ
ようこそ
ようこそ夜へ
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