2010-08-27

酋長の娘

わたしのラバさん 酋長の娘 色は黒いが 南洋じゃ美人
赤道直下 マーシャル群島 ヤシの木陰で テクテク踊る
踊れ踊れ どぶろくのんで 明日は嬉しい 首の祭り
踊れ踊れ 踊らぬものに 誰がお嫁に 行くものか
昨日浜で見た 酋長の娘 今日はバナナの 木陰で眠る


旧い歌で恐縮です(笑)でもコレって、まんまメリーさんだよねー。

本日は『その後のゲゲゲの鬼太郎』として文庫化された週刊実話版(ゲタ吉準主役の奴ネ。)でない方の、メリーさん出演の単発『その後のゲゲゲの鬼太郎』について。以前の記事の続き。
で、当時の水木センセの疲弊振りを感じるのはもちろんなんだが、同時に、描かれた当時(1969年)の水木先生を含めた一般的な男性側のジェンダー感覚が伺えて興味深い。東南アジアにイイヒトが出来てついでに子供も出来て……なんてのはちょっと前の日本じゃ珍しくないハナシだった。

社会格差と性。このハナシには、そういう側面もある。
週刊実話版『その後のゲゲゲの鬼太郎』にも通じるテーマ。
水木作品の深い着眼点は単なるファンタジー、単なる怪奇モノに終わらない。鋭い風刺が飄々と顕されている。それが時代を越えた魅力になっているのではないかと感じる。

さて、短編『その後~』発表が1969年で、ニューブリテン島再訪が1970年。それ以降、メリーさんは鬼太郎シリーズのなかで急速に『記号美少女』となっていく。
90年代に描かれた鬼太郎作品にメリーさんが原型となってるように思える南の島の少女が登場する。明らかに描かれ方が、例の『都合上出した、特に思い入れのない美少女像』なのだ。
この頃にはトペトロさんも亡くなり、近代化の波を受け変わりゆくニューブリテン島は、水木センセにとって南国憧憬の対象ではなくなってしまったのかもしれない。或いはメリーの住む島は、ブリガドゥーンのように何処かへ去ってしまったのかもしれない。

と、すると田中ゲタ吉(実話版鬼太郎)は理想郷から取り残されてしまった失楽園の物語とも言える。
それにしては、なんとも飄々と、とぼけた、逞しくもふてぶてしい失楽園譚だ。田中ゲタ吉の周囲では人間や妖怪達のみならず、天上も地獄も(果ては宇宙人や未来人までもが)軽々と行き交う。

田中ゲタ吉が大変にエロティックなのは、シモネタが多いからってだけでは無いように感じる。彼は、『ゲゲゲの鬼太郎』よりも多くのものを失い、それを受け入れて尚、暢気に在り続けるからかな?と思う。

2010-08-23

拍手お返事

拍手だけの方、本当にいつもありがとうございます。今後とも良しなにご贔屓くださいませ。
メッセージ頂いた方には反転でお返事致します^^



8/16 21:03 女妖譚をふたたび読めて嬉しかったです!の方
妄想テキストに拍手あざっす!!

5/16 18:36 ルルさん
ご無沙汰しています。心配かけてすみません!ボチボチやってますのでヨロシクです><
私も飽きっぽいせいかツイッターの呟き具合が三日に一度とかの昨今ですwww
それはそうと鬼太郎漫画に一刻堂先生が出ていて嬉しいです。猫娘が住んでた調布の神社って一刻堂さんが神主だったら面白いなーと妄想しましたw
あと、大泉さんネタにも笑いながら頷きました。大泉さんのねずみ男なら鬼太郎から乗り換えてもいいよねー♪
また遊びに来てやってくださいv

2010-08-22

『死人列車』

『新・ゲゲゲの鬼太郎』で一番好きな話かもしれない。大変味わい深いです。

持ち込まれた案件「自殺した級友をよみがえらせてくれ」と言うのに対して鬼太郎がまったく乗り気じゃないんです。
週刊実話版は、基本的に鬼太郎の支度をしてるゲタ吉なので普段から腰が重いのですが、ここまで嫌がるのは珍しいと感じます。

で、解決したのかといえば、全く解決していません。(ええぇ!!)
自殺した生徒を死人列車で連れ戻したら蘇生したってハナシじゃないんですよ。
鬼太郎曰く「とにかく赤ん坊になってどこかに生まれてますから」って……!
いいの?それで!とか思ったんですが、よく考えたら自殺した人間が蘇生するよりも良心的なマンガだなぁと思いました。ちょっと突き放したカンジで、戒めになってるように思うんですよ。終始不機嫌な鬼太郎の様子とあいまって。
少年漫画では出来ないなぁ、こーゆーのは。

と、まぁ、そーゆーのも理由ではあるのですが、やはり一番は、列車を待ってる鬼太郎の髪のなびき方が不気味セクシーってトコでしょうか。最高、もう。

2010-08-17

更新ではないのですが

ハロウィン漫画の続きがリンク切れになっておりましたので、再録しました。

2010-08-16

女妖譚

偶然の再会だった。私にとっては。

旧い友人の彼は、ひょっこりと目の前に現れたのだ。
子供時代に不思議な日々を共にした奇妙な少年。
目の前の青年を一目見たときに「あ」と声が出てしまった。

「久し振りだね。」と彼は、つい一月ほど前にも会ったように話しかけた。
彼は事情を私に告げて、私の車で自分をある場所へ連れて行ってほしいと言うのだ。相変わらず突飛すぎる話で理解を越える、なのに全く逆らえる気がしない。言われるがままに巻き込まれていくのも昔と同じだ。あの頃は私の家族も引き込まれるように彼に従っていた。

これは、魔性に魅入られると言うことなのだろうか?

彼には後部座席に乗ってもらった。
助手席で小皺を間近に見られるなんて避けたかったし、なにより、慌てふためいたり、年甲斐も無くはしゃいだり、照れ臭かったり。要は動揺していた。

彼は、意外とちゃんと年を取っていた。それでも私の息子か甥にしか見えないだろう。
煙草で潰れた喉から紡がれる声はザラザラしてるけど、はにかんだような不思議な甘さを含んでいるので、この男は少年時代のままにロマンチストなのだと思う。
その癖、奇妙に深く響いて良く通る。小声で話しかけられてもちゃんと聴き取れた。彼の本当の声は、きっと人間の声とは違う経路で私たちの耳に届くのだろう。地の底を出自とする妖しの声だ。
私が少女だった頃には、そんな風に思い至らず不可思議な魅力に絡め取られていた。
でも、今なら判る。

「久し振りね、鬼太郎さん。」
「今は、田中って言ってるんだ。」
「そう呼んだ方が良い?」
「いや、鬼太郎で頼むよ。夢子ちゃん?」
「嬉しいわ。でも人が居るところでは天童さんって呼んでね。」
「結婚してないの?」
「今はね。もう懲り懲りよ。」

自分の息子とも言えるような見掛の青年に名前を呼ばせるのは気を使う。あの彼女なら、今でも「鬼太郎」って呼ぶのかしら?
彼女は、美人ではなかった。可愛い、とも言いにくかった。むしろ奇妙なバランスの顔立ちだった。時代遅れといって良いような地味な支度だった。
そもそも人間の女の子じゃなかった。だから、私は安心して彼女に心を開けた。彼女と居る時には、女として張り合う必要も、優等生らしくする必要も無かった。どんな女友達よりも、素のままの天童夢子で付き合えた気がする。
思えば彼女は、誰にとってもそんな存在だった。後部座席にいる(昔とは打って変わって)冴えない風情の若い男にとっても。
いや、多分、彼にとってこそ。
今だから、よく判る。

「彼女はどうしてるの?猫娘ちゃん。」
「これから逢えるよ。」

言われるままに車を走らせて着いた場所に、少し大人になった彼女が立っていた。ちょうど後部座席の男と釣り合うくらい……いいえ、彼が合わせているのかしら?
バックミラーを覗いたら、喉の奥から笑いが漏れた。いそいそと車を降りる彼の仕草から心内が見える。昔は判らなかったけど、今の私にはよく判る。
歩み寄る彼女は、美人ではなかった。可愛い、とも言いにくかった。奇妙なバランスの顔立ちだった。時代遅れといって良いような地味な支度だった。
でもあの頃とはっきり違った。
彼女から、目が離せない!
私だけでなく、道往く人の誰もが同じだった。
不可思議な雰囲気だが、不快感は無かった。魅力というよりも、引力に近かった。

「久し振り、夢子ちゃん?」

私に向けられた笑顔も声も、親しみ深い日向の暖かさがあった。
何十年もの時を跨ぎこし、懐かしくて涙がこぼれそう。心が根こそぎ奪われるような、そんな気持ち。

……思い至った。彼女、女妖だった。
初めてゾクリとした。彼女の魅力は、物語に出てくる女幽霊の妖艶とあまりにも懸離れていたけど、人外の魔性なのだと感じた。こうして魂は奪われるのだと思った。

「あぁ……あなたも大人になったのね。」やっと笑顔を作った。

彼らに手を振り、遠ざかるバックミラーの鏡像に話しかける。
「今でも、よく判らないのよ?少女の私は、どちらに魅かれていたのかしら?」

溜息とも安堵とも取れるような深い息をひとつ吐いた。
私はすっかり大人になってしまったのだわ、と思った。

近況とか

さっぱり更新しないと思ったら妄想文ばかりアップして漫画は一年以上とか半年以上とか途中で放置しています。スミマセン><

体調不良ここに極まれりな昨今でして……漫画を描く体力と時間を作れたら描きます。本当にごめんなさい。私も悔しい。情けない!><

で、まぁ、このままでは精神衛生的にもアレなので、漫画のプロット的なアレを書き溜めてあったので体裁を整えつつチョイチョイ出してまいります。かなり破綻した文章ですが、私のゲタ猫妄想の晒し場って事で生温く見守ってやってくだされば幸いです。


他所んチで描いたゲタ+親父 親父さん出現時の内臓飛び出た感は重要ですよね?!ね?

ゲタ吉のハケ

ハケ、つまりシーンを辞する事。演劇なら舞台上から退出する事。

登場人物が人間なら「では」と物理法則に則った遠のき方を描けばいいのだが、妖怪となると一捻り必要だ。

ものすごく好きなゲゲゲ描きさんの描写でほぼ透明な焔が一瞬揺らいで消えるというシーンには本当にドギマギしまして、「うわーパクりてぇ!ものっそパクりてーーー」と、もう、いっそ「パクってイイすか?」と伺おうかと思ったのですが、ハタと「そんなカッコいいハケ方、田中ゲタ吉に似合わない。」という残念な気付きがありまして……(悔涙)

『スポーツ狂時代』最終話でのハケが印象深いのか、どうもただ闇に溶けて消えるようなイメージが強い。
そんでゲタ吉さん、厳密には下駄は履いておらず(履くとゲゲゲ営業スタイルに変化)煙草よりも酒を好む傾向にある(隙あらば呑んでおりました。高校生の癖に。)ので、ハケる際にゲタの音も煙の尾も引かない。これは絵にしにくい。地味に闇に溶けていってしまうだけだ。
それもたぶん、街中の電飾や街灯の届かぬ淀み湿った重たい闇の黒さにヌルリと同化する感じ。

全力で不健康だな!

あまりにも地味なので、クロスオーヴァー漫画の時には対峙した人間に術をかける必要性を生じさせて下駄を履いて頂きました。これで鬼太郎らしいハケになって一安心^^;







でも、ま、こんな手を何度も使うのもアレなので、いつか巧いこと『ヌルッ』っと消えるゲタ吉さんを描けたらいいなぁと夢想します。

2010-08-15

彼女が、まだ人間だった頃

歌の好きな子だったな
風に流れる解れ髪を目で追いながら
彼女の奏でる五線譜のようだと思ったんだ

2010-08-13

嵐が来る

黒い手がやってくる。
私を屠りにやってくる。
私の皮を剥ぎ、蚕の糸を奪い、亀の甲羅を削り、茫漠の調べを奏でる為に。
私の爪と牙で立ち向かおうとも、喉笛を狙う手からは逃れられない。
それが運命だから。
烏猫たる私には、全て見通せる。

三味線屋の黒い手よ。
私は怖ろしい。
お前の黒い手ではない。
今夜から、永劫に続く因果が怖ろしいのだ。

よかろう。
私の命をお前の手に渡そう。
引き換えに、お前の娘を私の環に乗せる。
猫の性を持ち、無垢な魂のままに、弄られ屠られ続けるこの因果の環に。

誰も逃れられない理の環だ。
それが私達の運命。

来い。
この嵐の夜に。
雷鳴と伴に。
新たに墓の下から生まれ出でる娘の為に。