2011-09-19

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2011-09-08

キャラクター

白状すると、私は登場人物を描く時に実際にお会いした方を思い浮かべながら描くことが多い。
愛する人、愛した人、親愛なる人、そこそこ仲良くした愛すべき人物、そういった人々のコラージュを描いてるのだ。

男性も女性も、版権キャラもだ。
ゲタ吉も、猫娘も、あの松下一郎でさえ誰かのコラージュだ。

例えば松下は、ベンチャー企業の社長(大企業の最若年役員)と、とある研究機関の室長を参考にした。実在の人物で、実際にお会いした方々だ。
老成した天才少年を描くための助走に、少年のように情熱的で天才特有の繊細さと狡猾さを持った成人男性を参考にする。

怪奇猫娘にいたっては、とっくに鬼籍に入った私の祖母だ。
もはや現代女性は、水木しげるが描いたオリジナル猫娘のたおやかな色気やあっけらかんとした健気さ、風雪に耐え抜くしぶとさは持ち得ないからだ。

私は、私以外の人が巧く描写できそうなキャラクターを描くことには全く興味がない。
その人が描けば良いのであって、それは私の仕事ではない。

なので、まどかやほむほむやアヤナミと同列にされちゃ迷惑なんである。
それは、ポルノ映画館に来て、「何故、感動するような純愛ストーリーじゃないのか?!」と文句を言うようなものだ。

2011-09-07

日記

手ブロ漫画を描いてない。
一度描いたけど、下ろしてしまった。

 『ⅳ』を描いて、色んな人から感想を伺った。
その中で「まど☆マギみたいじゃないからダメ」とか「(ヒロインが)アヤナミみたいじゃないからイヤ」とか言って、割合拒絶反応に近い感じの批判も頂いたりした。
ちょっとトンチンカンなように思ったが、やはりそう言うことでもないんだろうと思った。

私の描いてる漫画は、時代性とか、今の時代の気分とは離れたモノを描いてしまっているのだろうなと感じた。 
マチズモを持て余してる男性が多いんじゃないかと感じたのだ。
マッチョな感性や価値観で生きるにも語るにも、もう時代は複雑になり過ぎており、男性の多くは、心弱く、惨めに挫折を繰り返し、格好悪くジタバタと、あるいはジワジワとコツコツと何かを重ねては崩される、そんな日々の中で暴力性と性欲を抑制しとるんでないかなぁ。そりゃー大変なこっちゃ。災難なこっちゃ。

そういった男の姿を女に描かれるのは厭だったんだろうなぁ。
だから『まど☆マギ』とか『エヴァンゲリオン』がこれほどまでに男性オタから支持されるんだろうなぁ。
だとすると、もう本当に、『ⅳ』って誰も喜ばない漫画になるんだよなぁ。

などと、すっかり意気消沈して漫画読むのもシンドイ感じでしたんで映画など観ておりました。
漫画と違ってページを繰らずとも勝手に進んでくれるので楽なんですな。
漫画ほど好きじゃないから気合入れて臨まないし。
要は気楽に楽しめるんである。

で、映画観て、漫画を忘れたのかといえば全く逆で、もう毛呂山正まんまじゃないのって俳優見つけてきゃあきゃあ言ってました。

もう自分の為だけの自分だけが楽しい漫画で良いじゃないかと改めて思うんでした。 

マチズモに関して私が感じてた事ってここ数年の洋画でよく扱われてて、扱われすぎて茶化しに入ってて、そういった中でテュディックって俳優にも仕事が回ってきたみたいです。若い頃サッパリだったのにオッサンになってから良い役来るようになった。

ちょっと色々、言葉が足らなくて良くないんだけども、ぐるっと回って結局よかったなーって。
でも、やっぱ、私の漫画がダメな人にはダメだろうし、素人漫画だし、それは仕方ないなーと思う。

2011-07-06

身辺整理の続き

「スケベ。」
と俺に言った後、くるりと踵を返しエントランスに向ってロビーを真っ直ぐ横切ってゆく。
勿論此処で追いかけなければどうしようもない。
「なんでもないですよ。離婚したんですから。話したでしょう?」
自分でも何故こんな言い訳をしてるのか判らない。
しかし見透かされてるのは判ってる。罰が悪い。なんでお嬢さんは此処にいるんだ?
「彼女、セイって呼んでたわね。」
「此方では誰でもそう呼びます。」
「滞在中は私もセイって呼ぼうかしら?」
「お嬢さんカンケー無いじゃないですか。大体なんでボンに…」
「ベルリンで会議があったのよ。『情熱はいずれ醒める』ってあなたから聞いたけど?」
過日、彼女の告白を諭し説き伏せた時の俺の台詞だ。
「見事に醒めてましたよ。」
「傷ついた?」
「そんなことで傷つきません。」
「そう?私は傷ついたわよ。」
「は?」
「特にカンケー無いって処。」
俺は驚いて立ち止まった。彼女の口から弱音が出たのを初めて聞いた。
ホテルのロビーで後ろを向いてからこっち、全く振り向かない。全く顔を見せない。

俺は再び彼女を追いかけた。
ズンズン前に向って歩いてゆく彼女のつむじを見ながら俺は切り出した。
「お嬢さん、思い過ごしです。」
「焼け棒杭に火がついてるじゃない?」
あまりの言葉に俺は再び足を止めてしまった。そんな下世話な言葉をどこで憶えたんだか、全く。
「や、だから、それは…」
空を仰いで言葉を捜す、が、結局、他に思いつかなかった。
「……セイと呼んでください。」
敗北宣言のような気分だ。かくしてお嬢は振り返る。
「呼ぶだけですよ。」
俺は念を押した。
「充分よ?」
お嬢の笑顔は意味深長だ。
魔物が自分よりも上位霊位者に本名を委ねれば、名指しで下された命に逆らえない。
もう、俺が言うことはたった一つしかなくなってしまった。
「どうか『契約』をお忘れなきよう…」

2011-06-29

身辺整理など

 (なんでこうなった?)と天井を眺めて俺は自問自答する。隣に目を向けるとソバカスだらけの白い背中と褐色の強いブロンドが白いシーツに横たわってる。一昨年離婚した前妻だ。

 親父の危篤で慌てて軽井沢に帰って来たので、ドイツには何もかも放りっぱなしだった。
 病院でのリハビリや検査のオーダー、シェアハウス中の部屋。それらを放りっぱなしのままに、俺は蛙男に変生し、松下家令嬢の家庭教師やら、後見人やら、自称・メシアの第一使徒やら、とにかくバタバタしてる間に一ヶ月過ぎてしまった。つまり、就労関連の申請を何一つしていない内に報酬が発生してしまった。俺は18歳でドイツ国籍に切替えてる。日本生まれの日本育ちだが法規上は外国人となる。今の俺は『旅行者』として滞在してるので就労用の手続きが要る。これを怠ると不法就労になってしまう。非常によろしくない。
 そこへボンの前妻から打診だ。子供のDNA鑑定をするので可能性のある俺も一応サンプル採取したいというのだ。正直「知 る か !」と言いたい。子供が生まれる10ヶ月前、俺は紛争地に赴任していた。誓って俺の子じゃない。当時の彼女の恋人で今の夫で、彼女の直属の上司だった男の子供だ。が、生まれた子供に罪はない。大人げないことは言わない。すべて過ぎ去ったことだ。仕方ない。付き合うとする。

 つまり、ドイツには諸々身辺整理に来た。なのに、その滞在先のホテルでヤヤコシイ事になってしまった。予定外だ。なんでこうなった?
「だ、旦那と揉めたのか?」
身支度を始めた前妻に訊いてみる。
「まさか!」
事の始めから終わりまで、彼女に一切惑う様子はなかった。俺との結婚中、今の夫と付き合ってた頃もこうだったのだろうか。
「じゃ、なんでこんなことに?」
俺が欲望に踊らされた自覚はある。が、相手のあまりに清々した態度を見ると如何にも自分が消費された気分になる。テニスをワンゲーム楽しみましたって感じだ。
「私達、嫌いで別れたんじゃないし?」
「なら、なんでアイツの子供なんか!」
「結婚してみて判ったのよ。あなた向かないわ、夫にも父親にも。」
「なんだよそれ」
「またドイツに来たら連絡ちょうだい」
「悪いが二度と会わねぇ!」
ついに俺は大人気ない態度をとった。

 前妻を送る為にロビーに降りたら、フロントにお嬢さんが突っ立っていた。俺も彼女を見つけて棒立ちになった。滞在先は伝えてあったが。
「お嬢さん、何故此処に?」
思わず口から出てしまった言葉を笑顔で取り繕ってみる。が…
「じゃあね、セイ。素敵だったわ。」
態と鼻にかかった声で、前妻は意味深な台詞を言い捨てて行った。

 お嬢さんは前妻の後姿が見えなくなるまで、たっぷり目で追った。修行中なれど魔女たる彼女には全てお見通しだ。ましてや自分の使役魔の行動に鈍感なはずはない。
俺を真正面から見据えて口を開いた。
「スケベ」

2011-06-25

後日談

こちらの続き

お嬢さんが俺のデスクに小さいスノーボールを置いた。
「これ、持ってて。」
透明なプラスティック球の中には雪が降り積もり、外の景色と真逆だ。球の中には小さな洋館が建っている。何処かでみたことある、と思ったら、過日解体された旧軽井沢の家だった。
「随分手の込んだ品物ですね。」
「でしょ?苦労したのよ。あの家を移築するのは。」
「移築?」
「父が家獣を連れて行ってしまってから不便だったの。家獣には及ばないけど、トレーラーハウスなんかより気が利いてるでしょ?」
「家がそのまま入ってるんですか?」
「今そう言ったじゃない?失くさないように管理してね。」

そんな訳で、俺はいつも小さなスノーボールを持ち歩いてる。

2011-06-22

「あんたの家、どうする?」
朝食の席で長女の蛙子姉が俺に言った。
「は?ボンの?売ったよ?」
俺は、前妻と買ったドイツのマンションの件かと思った。
「違う違う。父さんが奥さんに買った家。確かアンタの名義になってたはずだけど。聞いてないの?」
「えー?アレ借家じゃなかったんだ?」
五歳で母が出奔して以来、俺はあの家に行ってない。旧軽井沢という立地も手伝っていた。外国人向けの小さいながらも瀟洒な建物だった。吹き抜けのサロンがあり、そこは二階の廊下から見下ろせる造りになっている。
夜、子供部屋を抜け出して、そっと母の様子を見ることがしばしばあった。そこである晩、俺は見てしまった。母と結婚相手の仲睦まじい姿を。
(厭な事思い出したな。)
程なく母はドイツに帰り、俺は父の家に住む事になった。
(まぁ、結婚しなかった親父も悪いよなー。)
「俺、いらない。売るよ。」
何だか余計な荷物を背負わされた気分になった俺はつい即答してしまった。怪訝な顔で蛙子姉は言う。
「見もしないで決めるの?」
「別に見たくねーし」
20歳近く離れている蛙子姉に、俺は未だに甘えてしまう。
「子供みたいなことを……まぁ、アンタの好きにすりゃいいけどさ。」
不動産会社の電話番号を書き付けて俺によこした。
「アンタの持ち物なんだから自分でやんなさい。これ管理会社だから。」

管理会社に連絡を取ったら、早速昼休みに家を見ることになった。
「ちょっと旧軽まで出かけてきます。」
俺のボスは好奇心旺盛な17歳のお嬢さんだ。
「なにしに?」
「家を売るんで確認に。」
しかも不動産に目が無い。
「私も見たいわ。」
そう言うと思った。
「廃屋ですよ?」
普段は好奇心旺盛なお嬢さんに手を焼くが、今日ばかりは有り難い。彼女が同伴すれば、俺は感傷を無視できる。生真面目な家庭教師、堅実な執事、タフなボディガード、冷静な後見人の顔で居られるはずだ。

そのはずだった。

が、なんと、俺はサロンの真ん中で失神してしまったのだ。

普通に家の中に入った。何も感じなかった。
多少の懐かしさはあったが、五歳で引き上げた家の記憶は朧気で、他人の家のようだった。中軽井沢の実家の方が懐かしさを感じるくらいだった。
長くも無い廊下を抜けてサロンに入り、吹き抜けを見上げた時に眩暈に襲われ、そのまま倒れてしまったのだ。

気付いたときに最初に目に入ったのは、倒れる前と同じく、吹き抜けの天井だった。
しかし頭の下には柔らかな感触があり、冷たく湿ったものが当てられていた。
それがお嬢さんの掌と濡れたハンカチだと気付き、起きようとしたら諌められた。
俺は髪を解かれ、眼鏡を外され、倒れた場所にそのまま横たわっていた。

少し、思い出話をしてしまった。
お嬢さんは尋問が巧い。追求されてるわけでもないのに、ついつい口を割ってしまう。
額に手を置かれ髪を撫でられたら、キスをしたいと思ってしまったので、慌てて目を堅く閉じ、一息に起き上がって目を醒ました。

後日、家の買い手が決まった。
思ったよりもいい値がついたので、書類の作成や手続きは管理会社に任せた。
買い手の名義は、とある会社になっていた。
お嬢さんは何も言わないけど、その会社の持ち主が誰か、俺は判った。
家の場所を通り掛かりに覗いたら、新しい別荘が建つ準備が始まっていた。
あのサロンも、母の姿も、俺の髪を撫でたお嬢さんも、今は俺の記憶の中だけだ。
もう再現される事はない。
その事に俺は安堵する。
誰も触れることが無い場所に仕舞った気分になる。

もう、あらゆる感傷に捕らわれる心配がなくなったと思える。

後日談